ーー農業総合研究所さんの事業について教えてください
松尾様(以下、敬称略):私たちの会社では農産物の流通をやっていまして、簡単に言うと、生産者と農産物を販売するスーパーマーケットをそれぞれ独自開拓して、市場やJAを通さず、生産者と販売者を直接繋ぐ流通を作っています。通常ですと、生産者から野菜や果物などの生産物を流通業者が買い取り、買い取った生産物をスーパーに売って終わりです。しかし、私たちの作る流通の形においては、生産者があくまでも主体です。
生産者が、自分の作った野菜や果物を売るスーパーを自分で選べるんです。例えばAスーパーの〇〇店、、Bスーパーの△△店などのように細かく選んでいただけます。私たちは、農産物をお店まで運び、生産者に代わって売る場所を見つけて繋げるというビジネスをしています。
さらにこの仕組みでは、生産者が商品の価格を自由に設定することができます。150円で売りたいと考えればその価格で販売できますが、売れなければ収益は上がりません。売れた場合には、生産者、スーパー、そして弊社にもお金が入るという仕組みです。
そのため私たちの役割は、スーパーマーケットの店頭価格情報や、生産者の売上情報など、生産者と生活者をつなぐ情報発信など、「情報インフラ」としての機能も担っています。
また、特定のスーパーで生産者の農産物が人気を集めた場合、スーパー側がその農産物を青果コーナーで常時取り扱うことを検討し、長期的な取引へと繋がるケースもあります。私たちは単なる流通業者としてではなく、生産者とスーパーとの橋渡し役として、両者の信頼関係を築くことを目指しています。
ーーデータ分析やデータ可視化における、お二人のミッションを教えてください
松尾:私たちのミッションは、生産者の「生産物」とスーパーの「インショップ(農家の直売所)」の売上を今以上に上げていくことです。全社的な意思決定を迅速化し、会社全体がクリティカルな課題を発見して、それに集中できる環境を作ることが必要です。そのためには、部門ごとが思い思いに行っていたデータ分析を統一し、全社員が同じデータを基に話し合い、優先順位を意識して改善アクションに繋げられる体制を構築することが重要だと考えています。
ーーSrush導入前の課題を教えてください
松尾:Srush導入前は、エクセルを利用して売上のデータを収集し分析していました。生産者ごとの売上や、スーパーの店舗ごとの売上を月次単位で集計してエクセルで分析をしていました。
私たちのビジネスにおいては、生産者が弊社に農産物を出荷しスーパーで売れないと弊社も売上が立ちません。生産者ごとの農産物の出荷数、販売数、売上、販売率などを集計しています。
昨年度の実績は、出荷点数は約7,000万点で販売点数が約6,300万点、データ数は当然膨大になります。会社全体のデータを月間で切り取って集計しようとしても、対象データのレコード数は、500万~600万行になります。当然、エクセルでは扱えません。何とかしようと、月間ではなく10日ごとに分割してまとめようとしてもまだ100万行を超えるデータ量になってしまう。仕方なく10日分をさらに5分割して計算し、その5分割したデータの必要な部分を抜き出して足してみたりなど、月間のデータを集計するだけでも、とにかく手間と時間が掛かっていました。
そういう状況の中で、基幹システムの10年分のデータという宝の山を経営に活かすことは非常に困難でした。
ーーSrush導入前の業務プロセスには課題はありましたか?
松尾:生産者の売上アップに貢献する為には、データの収集と分析は絶対に必要ですので、時間を掛けながらも、できる範囲でデータ収集と分析を行っていました。Srush導入前は、集計から分析までのプロセスにも課題がありました。
データ分析に不慣れなメンバーも含めて、それぞれが独自の仮説を立てて動いていたので、このままだとデータ資産を十分に活用できず、会社の成長を妨げる要因になると感じていました。
中澤:そこで、ある程度データをまとめて配信する役割を、以前私が所属していた部署にて担うようになりました。それでも、やり方としては基幹システムからデータをダウンロードしてエクセルにまとめて配信するという方法はそのままでした。また部署内でも、担当者ごとにエクセルの熟練度や社内発信の得意・不得意など、スキルにバラつきがありました。またどうしても、担当者ごとにデータ分析の視点にバイアスがかかってしまう点も問題でした。
ーーデータ分析に時間が掛かってしまうとどのようなデメリットがあるのでしょうか。
松尾:出荷コントロールや値付け指導に活かすため、当時からデータを見ていました。売れ行きが悪いということは、品質が悪いのか値付けが間違っているかの二択くらいで、その情報をいち早くキャッチして、生産者にフィードバックし改善しなければいけません。そのためには、早く正確なデータを得て、いかに早く行動に移すかが大事になってくるので、データの収集や分析にも速さが求められます。従来のエクセルを使ったデータ分析では限界がありました。
ーー基幹システムでのデータ可視化や分析はできますか
中澤:基幹システムには販売率などを確認できる分析画面がありますが、どうしても営業担当は「担当集荷場だけ」や「特定の生産者だけ」に絞り込んだデータを見ることが多いです。そのため、「この生産者の出荷に課題がありそうだから見に行こう」といった仮説に基づいたピンポイントの分析は可能ですが、全体を俯瞰して状況を把握することは難しい状況です。事業全体の課題を把握したうえで、それぞれの課題を発見していくような使い方をすることが非常に困難でした。
ーー俯瞰データを見られないことのデメリットを教えてください。
松尾:俯瞰してみることができない最大のデメリットは、個別のデータだけでは、そこから見つかる問題が他の問題と比べてどれほどクリティカルかが分からないということです。まず全体を俯瞰して見て会社全体に問題があるのかを確認する。次に階層を一段階落としてデータを比較し、最も大きな問題から解決するべきです。
私は報告を聞く立場にありますが、いきなり「ここがこうなので問題です」と言われても、確かに問題かもしれないけれど、全体の中での影響度合いを比較してみたらそれほど大きな問題ではないかもしれないですよね。何かと比べないと、どの要素にどのくらい課題があるのか分からない。
Srush導入前は、データ量の問題で全社を俯瞰した後のドリルダウンが困難でした。俯瞰してドリルダウンできないとクリティカルな問題に気付けずに見過ごしてしまう可能性もあります。担当が自分の勘に頼って問題がありそうな店舗や生産者のデータを調べに行くプロセスは、合理的とは言えませんでした。
ーーSrush導入後の成果について教えてください
松尾:Srushを導入したことで、圧倒的に質の高いデータを簡単に活用できるようになりました。
例えば、過去5年間の会社全体の推移を知りたい場合、1年あたり7,000万行のデータが5年分となり、エクセルでは集計・分析できない量ですが、Srushなら可能です。具体的には「出荷産地全体の中でどこが伸びているのか」「それが過去5年と比較してどうなのか」といった情報もすぐに把握できます。
以前は試みたこともありませんでしたしその気力すら湧かなかった。Srushではこれを瞬時に表示できます。そのスピードと利便性には本当に感動しました。
ーーSrush導入後可能となった膨大なデータ分析が、会社に与えた良い影響を教えてください
松尾:Srush導入後は、過去5年分のデータを集荷場別だったり、スーパー別だったり比較して見ることが容易になりました。データを分析していくと、このデータの基準値はここだよね、であればこの基準値を会社全体の目標にしよう、という会社全体の目線を合わせられたことが大きな進歩です。
中澤:現場の営業メンバーが最も活用するデータは、茄子やピーマンといった品目ごとの出荷数や売上の推移です。Srush導入前にも生産者ごとの出荷点数推移データ(A集荷場の生産者Bさんのピーマンの出荷数)を確認することは可能でしたが、年間のデータ集計に3日かかり、データが重いため保存や共有にも手間がかかる状況でした。苦労して送ったデータも開けないということもありました。
Srushを導入したことで、3日間掛けていた作業がわずか1時間で完了するようになり、効率が飛躍的に向上しました。また、ドリルダウン機能を使えば「過去の同じ月の出荷量」との比較も瞬時に行えます。エクセルでは実現できなかった効率的で信頼性の高いデータ分析が可能となりました。
ーー具体的な、データ分析業務の変化について教えてください
中澤:野菜の市況は日々変化します。そのため、商品の価格や出荷点数を常にモニタリングし、相場が下がったタイミングで適切に生産者さんに推奨する売価を変更したり、出荷量を見直したりしなければ、売れ残りのリスクが生じます。こうしたタイミングを逃さないよう、毎日データをチェックし、異常値があれば即座にアナウンスを行うのが私の役割です。しかし、Srushを導入する前は、データを毎日ダウンロードし加工する時間がなく、この業務は週に1回程度しか実施できませんでした。
Srushを導入した現在では、毎日決まった時間に画面を開くだけで必要なデータを瞬時に確認できるようになりました。数値に問題がなければ、わずか1分程度で作業が完了します。データチェックとアナウンスのスピードが大幅に向上したことで、業務が効率化され精度と速度が飛躍的に高まりました。
ーーSrushを知ったきっかけを教えてください。比較検討などはされましたか?
松尾:当時、関連会社だった青果市場を視察した際、年配の方から新入社員まで全員が「BIツール」を使って同じデータを共有し、前日の売上を瞬時に把握している様子を目の当たりにしました。その効率的なデータ活用に感銘を受け、帰りの新幹線で「BIツール おすすめ」と検索し、一番評価の高かったSrushさんに新幹線の中で問い合わせをしました。
Srushさん以外にも他社製品を検討しましたが、そちらはパッケージ型の製品で、私たちの事業に必要な複数ロジックを用いたデータ加工には対応が難しいというフィードバックを受けました。さらに、カスタマイズには高額な費用がかかり、カスタマイズしない場合は私たちのプロセスをその製品に合わせて変更する必要がありました。
その点、Srushさんは自由度が高く、柔軟な設計が可能であることに加え、担当の方も私たちに寄り添い、課題解決に向き合ってくれると感じました。また、私たち自身も元々はスタートアップ企業であるため、同じスタートアップ企業として共に成長できるSrushさんを選ぶことにしました。納得感のある価格設定も導入の決め手の一つです。
年間を通して考えるとシステムに強い社員を新たに採用するのと同程度の費用ですし、うまくいかなかった場合は契約満了で終了することができます。まず試してみたいと考えていた私たちにとって、非常に良い選択肢でした。
ーー導入の際のご不安や課題などはありましたか?
中澤:Srushでは関数を使ったデータ加工が可能ですが、エクセルの関数とは異なるため、最初は少し戸惑いを感じました。1日の中で2〜3時間のまとまった時間があれば考えながら構築できたのですが、初期段階では30分程度の隙間時間で作業しようとして難しさを感じる場面もありました。
導入時にはSrushさんのデータ統合とダッシュボード構築代行サービスを活用しました。このサービスの活用により、生データを適切に加工し、「0から」ではなく「1から」のスタートが可能となり、構築作業を着実に進めることができました。
構築代行のサポートがあったことで、導入初期から安心して取り組むことができたのは非常に心強かったです。このような充実したサポート体制も、Srushの大きな魅力の一つだと感じています。
松尾:どのようなサービスを導入するとしても、その先にどのようなメリットがあるのかを担当者が想像できない場合、優先度を上げることは難しい。
一定期間かけて構築を終えた後、これだけ楽にデータ活用ができるようになると分かっていれば、誰でも頑張れると思います。
ーーなぜデータドリブンな経営が必要なのだと思われますか?
松尾:Srushを活用するようになり「やっぱりデータだな」と実感しています。私の前職は化粧品の通販会社で、すべてがデータに基づいて運営されていました。商品が製造されたらそのまま倉庫へ配送され店頭販売がないため、受注件数や反応率はもちろん、例えば「このチラシを打つと何件の電話があるか」といったすべての活動をデータで管理していました。
今や、スポーツですらデータを活用する時代です。たとえば野球では、選手ごとの弱点や投球コースなど、すべてがデータとして分析されています。ビジネスこそ、もっと積極的にデータを活用するべきだと感じています。
何か問題が発生した際、多くの方は当然のようにPDCAサイクルを回されるかと思います。データ活用の大きな価値のひとつは、良かったときも分析し再現性を担保することができることです。良かったときこそ分析して横展開していかないと、会社は成長しません。
良かったことの再現性と悪かったことへの対策という両輪でいくためには、それらをデータ分析し、継続と改善の打ち手を決めていかなければならない。そうすることで会社は強くなっていくと考えています。
ーー今後Srushをどのように活用していきますか?
中澤:毎年、天候や生産者、市況などの状況が変わるため、その時々の課題に応じた新たなデータの切り口が求められます。一つのデータが見られるようになると、「次はこういった視点でデータを組み合わせられないか」という新しいアイデアが次々と出てきます。データ分析の切り口は無限で、それらは改善の種のようなもので、具体的なアクションに結びつけられるデータ活用を、より一層推進していきたいと考えています。
松尾:Srushを活用することで、会社全体の数字を可視化し、迅速で正確な意思決定が可能になりました。現在は関東エリアで成果を上げていますが、次のステップとして関西エリアへの展開を計画しています。その後、中部や北海道といった他エリアへの拡大も視野に入れています。
ー最後に、Srushのおすすめポイントをお願いします。
中澤:Srushの構築代行サービスにより、生データを「0から」ではなく「1から」の状態でスタートできたため、導入のハードルが大幅に下がりました。データ分析の質が上がったことで「もっとこうしたい」という新たなアイデアが次々と生まれてくるようになりました。
松尾:Srushでは、経営層から現場の担当者まで同じデータを見ていますし、即座に良いのか悪いのかの判断が誰でもできます。
社員全員が同じデータを活用できるのは大きなメリットであり、これは無制限プランによってリーズナブルに実現できました。このような体制を整えることが、データ分析に基づいた改善を組織全体で進めるために必要なのだと思います。
■株式会社農業総合研究所
「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」をビジョンに掲げ、日本及び世界から農業が無くならない仕組みを構築することを目的とした産直流通のリーディングカンパニーです。全国約10,000名の生産者と都市部を中心とした約2,000店舗の小売店をITでダイレクトに繋ぎ、情報・物流・決済のプラットフォームを構築することにより、農産物の産地直送販売を都市部のスーパーで実現した「農家の直売所事業」と、生産者から農産物を買い取り、ブランディングしてスーパーに卸す「産直卸事業」を展開しています。
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